私のMakerchipの制作ノウハウ① ~毛筆風に”描かせて”みよう~

メイカーチップとはなんぞやのところはいったん省略しまして、、私のメイカーチップはどのようにしてつくったのか興味を持ってくださる方が多数いらっしゃいました。これどうやっているの?の声は大きく分けて5要素ぐらいに分解できると思います。 

今回は、印字手法の紹介です。
「いけばな展示」の文字が太い箇所と細い箇所が入り混じっていて、かつ文字にシェル感がないのがメイカーの皆様には意外だったようです。これを「毛筆風」と呼んでいただきました。

@miu_roboのMakerchip、「いけばな展示」(JRRF2026)

3DP歴12年のマウント 「実は数年前からある機能なんですけどね」

むかしむかし2017年ごろ、Simplify3D V4という有料スライサーがリリースしていまして、この目玉機能の一つに可変幅出力がありました。
当時は0.4㎜ノズルで0.4㎜幅固定で印刷すると、0.4㎜未満の隙間は空きっぱなしになったり、0.4㎜x2=0.8㎜未満の厚みの印刷ができなかったりしました。

Simplify3D® Version 4.0より

この機能が後にアラクネモードだとか呼ばれて、0.4㎜ノズルでも0.4㎜未満の箇所も埋められるような動作をするまでになってきました。詳しくははるかぜぽぽぽさんの記事を参考にしてください。

この機能はPrusaSlicer2.5.0から実装されていますので、今となっては一般的になりました。ですので、理屈上誰でも簡単にできちゃうわけですが、この機能が一般的になりすぎて、わざわざパラメータを考えながら調整して使ったことのある人が限定的なのかもしれません。

スライス設定Before-After

 さぁ、スライサのアラクネモードを使えば良いとわかったら、周辺パラメータを弄るだけ。初期パラメータからいろいろ弄ってやるとこんな感じになります。

左図:0.2mmノズルで通常設定(パラメータ調整前) 右図:スライスパラメータを調整した後 PrusaSlicer 2.9.5にて
上記の拡大図

 左図のように、デフォルトではアラクネモードを有効にするだけではなんか惜しいパスです。
「なんか惜しい」を具体に落とすと、この2つかなと思います。
・シェル状で外周を一周描くような形状になっている
 それゆえに、文字の終点のパスが折り返しとなり、細いところまで描ききれない
・パスが中途半端に細い
 それゆえに、インフィルが必要となり、かつ複雑なインフィルに対応しきれない
 (シェル数周できるぐらい十分にパスが細ければ)

 これを解決するのが右図の「毛筆風」パスになります。どちらもアラクネモードを適用していますが、右図の調整後は積極的に動的にパスの幅が変化しているのが色の変化で分かります。

AI解説

右側:可変線幅スライス(Variable / Adaptive Width)

  • 青〜緑のグラデーション → 線幅が箇所によって変化している
  • 細い部分では線を細く、太い部分では線を太くと、形状に合わせて幅を動的に調整
  • パスの重なりや無駄な折り返しが大幅に解消されている

可変線幅(右側)のメリット

メリット説明
形状への適合精度向上細い箇所も太い箇所も隙間なく埋められる
過剰押出・不足押出の解消幅を調整することで材料量が最適化される
パス数の削減無理な重ね塗りやループが不要になる
表面品質の向上余分なシームや重なりによる膨らみが減る
細部の再現性向上細い形状でも適切な幅で綺麗にトレースできる

まとめ

左は線幅固定のため形状によっては無理な軌跡になるのに対し、右は線幅を動的に変化させることで、形状にぴったり沿った効率的な印刷が可能になります。これはPrusaSlicerやOrcaSlicerなどのArachne(アラクネ)エンジンが実現している機能に相当します。

みなさんも是非、パラメータを弄ってみてください、以上っ!

「え、できないんですけど??」って苦情を受けそう

 各種LLM(生成AI)にどうやったら右図のようにできるか教えてくれたらいいのですが、聞けば聞くほどハルシネーション祭りに。ネットの情報からそれっぽく引っぱり出してくるのが限界です。LLMが自らスライサを操作して試行錯誤できる環境になるまでは期待しないほうがよさそうです。

 結論は、0.2㎜ノズルを使いながらも、以下のようにパラメータを振るとあっさりいけます。
  ・ノズルを仮想的に太くする。例:1.0mm
  ・最小境界線幅を極端に小さくする。例:0.01㎜
  ・最小フィーチャーサイズを極端に小さくする例:0.01㎜

 現時点での各種スライサのアラクネモードは、細くする側に強く制御がかけられますが、太くする側の制御が弱いです。そこで、仮想的に太いノズル線幅を基準にして、最小幅を小さくしてやることで、広い範囲の強弱がつけられるようになります。

.3mf サンプルデータはこちら

Prusa Slicer 2.9.5用のサンプル.3mfデータを用意しました。

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